実験02

イスで交差点を右折する時、二段階右折するべきか? 弁護士にきいた イスで交差点を右折する時、二段階右折するべきか? 弁護士にきいた

世の中の動かしてみたいアレやコレやにingを足したらどうなるのかやってみたコクヨの実験

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コンプライアンスの遵守が求められている。

ネット上で公開する記事においても、それは同様で、違法の可能性がすこしでもあれば「炎上」してしまうほど、インターネットは可燃性ガスに満ちている。

当サイトでも、イスを使った実験をさまざまに行っていく予定だが、はたしてイスで外を走る場合、どんな法令に従うべきなのか? そもそもイスはいったいなんなのか? 車なの? それとも遊具?

そのあたりの疑問をつまびらかにしたい。

交通の法律のエキスパート交通の法律のエキスパート

というわけで、我々は交通問題の法律のエキスパートに見解を聞くべく、法律事務所へうかがった。

ベリーベスト法律事務所・外口孝久弁護士

対応して下さったのは、交通事故案件を多数扱う外口孝久弁護士。

本日はよろしくおねがいします。

はい、よろしくおねがいします。

今日は、イスに乗ったまま外出したいなぁと、そんなことを考えまして、その際、どんなことに気をつければ違法にならないのか、それを伺いに参りました……基本的に、イスって歩道を走っても構いませんか?

そこです。これが結構難しい問題でして……。

いきなり、難題でしたか? 基本的にイスで外を走る場合は、どんな法律に従うことになりますか?

基本的には、道路交通法に従うことになりますね。この場合、イスを軽車両とすると、歩道を走ってはダメってことになるんです。

え、どういうことですか?

道路交通法では、軽車両という区分がありまして、軽車両と認められる車両は、運転免許は必要ないんですが、交通規則が定められていて、違反すると、いわゆる切符が渡されることもありえます。

えぇっそりゃ大変だ! イスは軽車両に入る?

法律の文言をそのまま解釈すると、イスは軽車両に入る可能性があります。ちなみに、軽車両の定義はこうなってます。

道路交通法第2条第1項11号
軽車両
自転車、荷車その他人若(もし)しくは動物の力により、又は他の車両に牽(けん)引され、かつ、レールによらないで運転する車(そり及び牛馬を含む。)であつて、身体障害者用の車いす、歩行補助車等及び小児用の車以外のものをいう。

この条項に照らし合わせて考えると、キャスター付きのイスは、人の力によって牽引……というか、動かすものに入りますよね。そうなると、軽車両と考えることができるのではないかと思います。

イスは軽車両になるんですか……じゃあ例えば、台車って車輪ついてますよね? とくに最近は、宅配の方が歩道で台車を押してるところを見かけるような気がしますけど、あれ、軽車両だとしたら、違法じゃないですか?

そうなんです、台車は軽車両にあたるはずなので、基本的には車道を通行する義務があります。しかし、現実的な必要性を考えると、歩道の通行がある程度、柔軟に許されているのだと思います 。なお、軽車両が歩道を通行することができる場合については、次のような定めがあります。

道路交通法第17条
車両は、歩道又は路側帯(以下この条において「歩道等」という。)と車道の区別のある道路においては、車道を通行しなければならない。ただし、道路外の施設又は場所に出入するためやむを得ない場合において歩道等を横断するとき、又は第四十七条第三項若しくは第四十八条の規定により歩道等で停車し、若しくは駐車するため必要な限度において歩道等を通行するときは、この限りでない。

法律と実態がマッチしていないというわけですね。

この法律が作られた当時と今では、道路をめぐる環境がガラリと変わっているにもかかわらず、法律が改正されていない結果だと思います。現実的に考えてですよ、台車は軽車両だからといって、たとえば環八や環七の大きな道路を押して走れと言われた場合、逆に邪魔ですし、なにより危ないですよね?

危ないです。

それと同じで、イスが軽車両に当たるとしても、だからといって法律を守って車道を走ったら現実的に危険ですから、やむを得ず歩道を走っても、それで警察に取り締まりされるか?というとこれは微妙ですね……イスで公道を走る必要があるのか? というのは別としてですが……。

軽車両は、基本的に車道の左側を走行しなければいけない。

軽車両なのか、そうでないのか。ボーダーライン上にあるもの、他にも結構有りますね。ネコ車(手押し車)とか、ベビーカーとか……。

ネコ車は、軽車両になるでしょうね。ベビーカーは先程の定義でいえば、小児用の車として歩行者に分類すべきですね。

この車、軽車両?

ローラースケートやスケートボード、キックスクーターはどうですか?

軽車両のようにも思えますが、構造や用途が遊戯に使うものですので、軽車両ではないと考えられています。一輪車とか、キックボードなどもそれに該当しますね。

なるほど……実は、コクヨは「いす−1グランプリ」(http://www.kokuyo-furniture.co.jp/isu1/)という事務椅子で24時間耐久レースを行なうイベントにも参加しているんですが、これは公道を閉鎖してその中で行っているので、こういう場合はスケボーやローラースケートに準ずる扱いなんでしょうね。

イスの話に戻しますが、イスで外出する場合は、仮にイスが軽車両ということであれば、道路交通法を守って出かける必要がある。ということは、イスで交差点を右折する場合は……?

二段階右折する必要がありますね。

やっぱりそうか。イスは、右折の際に二段階右折が必要……全く役に立たない豆知識ですが、重要ですね。

この問題は、いままで誰も考えたことがないと思いますね。

え、ないんですか?

ないですよ!

イスが軽車両かどうかなんてだれも考えたことないです!

イスに動力をつけるとなったら?イスに動力をつけるとなったら?

イスが軽車両にあたる可能性がある。ということはわかりました。では、このイスにモーターを付けて自走させるようにした場合、どうすれば公道を走ることができますか?

それは国土交通省の担当と、年単位の折衝が必要になるでしょうね……。まず、モーターを付けて自走するイスは、道路交通法上「原動機付自転車」ないしは「自動車」に該当する可能性があるため、道路をイスで走らせるには、国土交通省令で細かく定められている基準に適合させた上で、自動車や原付バイクのようなナンバーを国土交通省に交付してもらわなければならないと思います。

はい。

どのようなものにナンバーを交付するかについては、法律とは別の省令で定める細かい基準があるんです。それに適合してないと公道を自由に走ることはできません。

六法全書に書いてないんですか?

みなさんのイメージするいわゆる六法全書には省令は載っていないです。道路交通法や道路運送車両法には、あくまで道路交通に関する大まかな決まりが書いてあるだけで、自動車やバイクの安全基準は書いてないです。

イスでナンバーを取得するにはどんなものが必要なんでしょうか?

省令までいくと高度に技術的な話になってくるために、私どもの専門外なので詳しくはわからないのですが、例えば、ブレーキですとか、バックミラー、方向指示器やハンドル、シートベルト、警音器など、装備しなければいけないものが細かく決まっているはずです。

安全の基準が日本は厳密なんですね。

おそらくなんですが、国土交通省の省令等にしたがってイスを改造していった場合、完成したものの外見はほぼ自動車と変わりないものになっている可能性がありますね。

あー、画期的なアイデアやイノベーションに対する横やりを、全部呑んでいったら、結局今まであったものの二番煎じみたいなものしかできなかったという……。

日本は厳しいんです、セグウェイなんかも、発売当初は道路交通法上どのような規制を受けるのかが曖昧だったので、公道を走行した結果、道交法違反で書類送検された人が何人かいましたね。

いましたね……日本はイレギュラーなものが新しく出ても、それに対応する反射神経がニブいですね。

最終的には裁判所の判断ということにはなるんですが、その前段階として、イスが何にあたるのか? 自走させるためには何を取り付ければよいのか? そのへんの理論武装はもちろん必要ですね。

理論武装は必要

クレームをつけようと思ったらなんとでも言えるクレームをつけようと思ったらなんとでも言える

最初の話に戻りますが、イスで道路を走る場合、軽車両として、道路交通法を遵守すれば、完璧でしょうか。

確かにそうとも思えますが、およそ、日常生活を送る以外のことをやろうとした場合、事後的に何かしらの規制に引っかかっていると指摘される可能性は捨てきれませんので……。
例えば、少し話は違うかもしれませんが、最近、経済産業省が、電動アシスト機能付きベビーカーは道路交通法上の「軽車両」にあたるとして車道を走るよう求めた見解を発表し、批判を浴びました。
国内では製造していない6人乗りの大型電動ベビーカーのサイズが大きすぎて道路交通法上の「小児用の車」と認められなかったことによるものですが、いかにも杓子定規な解釈ですよね。

うーん、きびしいですね……。

私達は交通事故に関する法律業務を数多く請け負ってるわけなんですが、当然ですが、それはあくまで乗っている自動車や自転車が法律上の定義内に収まっていることが大前提なんです。ですので、イスで出かけるのがOKか判断してくれという依頼は……初めてですね。

なんだか、申し訳ない気持ちになってきました。

いや、でも、こうやって、疑問をぶつけてきて下さったので、こちらも色々調べて勉強になりました。

道路交通法を遵守しつつ楽しい記事をお届けします道路交通法を遵守しつつ楽しい記事をお届けします

「キャスター付きのイスは軽車両かもしれない」という知見は、今まであるようでなかった。

冒頭にも書いたが、このサイトでは、イスにまつわるさまざまな記事を公開していく予定だ。

その際は、常に道路交通法を遵守するよう、細心の注意をはらって記事作成していく所存である。

※本記事は、イスで公道を走ることを推奨しているわけではありませんのでご注意ください。

取材協力:ベリーベスト法律事務所

本内容は弁護士の個人の見解であり、
コクヨの見解ではございません。
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