実験12

概念買いという新しいingの買い方を聞く 概念買いという新しいingの買い方を聞く

世の中の動かしてみたいアレやコレやにingを足したらどうなるのかやってみたコクヨの実験

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ingを使っている株式会社コルク 代表取締役社長の佐渡島庸平さんにお話を聞きます!

今までの椅子の概念を覆した椅子「ing」。座るというよりも「乗る」という感覚の椅子だ。人の微細な動きに合わせて360度自由に座面が動く。今までの椅子の樹形図にはなかった新しい考え方の椅子だ。

そんなingを使っている、漫画家や小説家などクリエイターのエージェント業を行う、株式会社コルク 代表取締役社長の「佐渡島 庸平(さどしま ようへい)」さんに話を聞いた。

樹形図の根元を割る椅子 樹形図の根元を割る椅子

佐渡島庸平さんは2002年に講談社に入社し、週刊モーニング編集部に配属され、「ドラゴン桜(作者:三田紀房)」、「宇宙兄弟(作者:小山宙哉)」などの編集を担当。2012年に講談社を退社し、作家のエージェント会社「コルク」を設立した。現在は編集者でありながら、経営者としての顔を持つ。

佐渡島庸平さんはingが発売された直後からingを使っているそうだ。今回はingの感想や、経営者としての仕事環境の作り方などのお話を中心に、ingの開発者である木下洋二郎さんと対談していただいた。

ingは今、会社全体で使っているんですか?

いえ、僕だけです。濱口秀司(はまぐち ひでし)さんと食事する機会があって、帰りのタクシーで買いました。

濱口秀司さんは、USBメモリやマイナスイオンドライヤーなどの企画や発明をしたビジネスデザイナー。ingの開発にも携わっている。

何が決め手だったんですか?

その時に濱口さんから聞いた「樹形図の根本を割る」という話が超面白いと思って。もともと、いい椅子を使っていたので、その椅子に不満があるとかではなくて、新しいものに興味があったという。樹形図の根元を割るという概念を体で理解したかったんです。

樹形図というのは、ものごとの相違や進化を枝分かれの形で表した、樹の形のような図のこと。

樹形図はこういうものです!

椅子の樹形図の場合は、基本となる椅子があり、それがデザインや機能によって枝分かれし、進化していく。ただingは今までの枝には当てはまらず、新しい枝の樹形図を作り出しているということだ。

使ってどうでしたか?

すごくいいですよ! 揺れることで、 体幹が無理しなくても、自然とよくなっている気がします。下腹部に力を入れるのは意識しないとダメじゃないですか。この椅子だと自然に促してくれる感じなので。

そうですね!

退屈したときや、集中が切れたときに揺れたりすると、ちょうどいい。揺れてちょっと考え事をして、また集中するという感じです。

考えるときに揺れるといいというのは実験結果に出ています。揺れることで脳波のα波とβ波が増加するという結果が出ていて。心理学の先生と話したときに、比喩的な話なのですが、脳が情報の収納庫だとすると、揺れることでその引き出しを開ける手助けをするようなことになると言っていました。引き出しが開けば、脳の中を可視化することができ、アイデアが出やすいと。

そもそも僕が買った理由はあまり一般的ではないと思っています。樹形図の根元を割るという概念を体感したくて買ったわけですから。椅子は動かないもの、という前提が椅子の樹形図の一番上にあって、その前提を「動く」「動かない」に分けて、動くというところから発想していったらどうなるのか。その試みがある種の思考ゲームで終わってしまっているのか、それとも本当に画期的なものができたのか、っていうのを体感したい、というのがingを買いたくなった理由です。

そういう購入理由は初めて聞きました。

椅子ってみなさんデザインで選ぶことが多いじゃないですか。ingはデザイン的なことだけではなく、座面が動いて体を動かせることで、体幹を鍛えるみたいなところにも価値が含まれます。動くことだけを考えると、乗馬している感覚が味わえるフィットネス機器でもいいわけですが、誰もオフィスの椅子をそれにしようとは思わない。

そうですね。ingはバランスボールとかそういう系統のものに近い。でもフィットネス機器ではなく、椅子としてしっかり仕事で使えるものにしたという感じです。

もし、僕が健康が大切だからと言って、社長室みたいなところで、乗馬の揺れが体験できるフィットネス機器で仕事をしていたら、社員は「社長は大丈夫か」ってなるわけです。今までの仕組みの中の「動く」機器は健康維持が先にあって、それを無理やり椅子にしている感じだと思います。そうではなく、そもそもの「椅子は動かないもの」という前提概念を揺さぶり、樹形図の根元を割っていくというingの挑戦自体が面白いと思ったんです。

かなりクリエイター的な考え方ですよね。世の中に問いかけるにはどうすればいいか、どういうやり方があるのかという見方をされていますよね。「概念買い(概念に共感して買う)」は初めて聞きました。実は最初は樹形図を意識してなかったんですよ。意識するようにしてよかった!

そうなんですか?

実は濱口秀司さんには、この座り心地がほぼできた段階で入っていただきました。僕らはその段階では今までと違うものを作りたいと思ってはいましたが、樹形図という考え方は意識していませんでした。ingに座った濱口さんに「樹形図の根本を割るものですね」と言っていただいて、そこから逆に“意識してもっと樹形図の根本を割るにはどうすべきか”と意識しながらブラッシュアップした感じです。概念と聞いて驚きましたね。僕らも作っていながら、概念としては持っていなかったので。

ただ新しいものを作っても、それが正しい概念の中に入れられないと、世間には広がらないですよね。

そうです。樹形図の根本を割るという考えを今もずっと意識しながらプロモーションを考えています。

最近、漫画の樹形図だったら、どこで分かれるのかを考えています。例えば漫画って、コマ割りしてないのはありなのか、なしなのか。樹形図をたどったときに、コマ割りしてないのは漫画と呼べないな、と。じゃあ、なんでなのか? 枠線がないと人はイラストだと思うんですよ。そこに枠線を入れると急にコマになる。コマがあるというのが漫画にとって重要だなと。そして2コマになった瞬間に時間の流れが生まれるので、2コマから確実に漫画と呼ばれるものになる、と考えています。2コマからがマンガと呼べるのなら、いま世の中にあるほとんどの漫画は単行本という形だけれど、2コマで漫画ということをもっと意識させて、インターネット上のサービスを考え出してもいいんじゃないかなと、思考が発展します。
この漫画の樹形図を発展させたものとして2018年3月より「コルクBooks」(https://corkbooks.com/)を試験的に展開しています。

今の考えに至ったのもingのおかげですかね?

ingですね! ingというか樹形図ですが、ingですね!

社内環境とは 社内環境とは

仕事では椅子の重要性は高いと思いますか?

僕はそう思いますね。ただ椅子はこだわるというか、前提にあるので意識しないところかなと。空気とか水とかって前提だから、意識しないじゃないですか。水が汚い所とか空気が薄い所に行って初めて意識する。いい場合は意識しない。個人事業主とかの場合は、自分へのプレゼントでいい椅子を買ったりすると、いい椅子に座っているな、と思うかもしれないですけど、ほぼ全ての会社員にとっては、椅子は与えられるもの、変えられないもので、「椅子買い換えましょう」と言ってもいいんだという認識を社員に持たせること自体が結構難しい。そのレベルで社員が社内改革への意見を言い出すようになってほしいな、と僕は思っているけど、それは結構難しくて、僕の方で全部椅子を変えるから、何がいい? と意思決定していく感じです。

オフィス環境にこだわりや関心を持ち始めたのはいつ頃からですか?

いつだろうな、1年くらい前かな。会社は作って6年くらいですが。こだわるというか、お金がないとオフィス環境にまでいかないじゃないですか。ただ、生きていくことを考えたときに、体調がよくないと生きていけない。だから、オフィス環境って会社を作るときに最優先するべきことなんだけど、その余裕をみんな持ちづらかったりするので、うちもオフィス環境を整えようと思うようになったのは最近ですよ。それでオフィス環境に詳しい方が会社に来た時に、「佐渡島さんこれね、コルク全員が出社している時間帯はCO2濃度が高くなっているから、そこをケアした方がいいよ」と言われて、CO2濃度を測って、オフィス全部に緑を入れるようにしました。

オフィス環境はCO2以外だと、どういうことに着手してますか?

どこまでを環境というかですけど、ランチの食べ方とか。基本的に月2回、シャッフルランチというものを行っています。社員が4人ずつくらいでレストランに行って、毎回違うメンバーと食事をするというものなのですが、その費用を会社が出したりしています。それをきっかけに、社員が一人で食事をしないようにする流れを作ったりとか。そういう細かいことを積み重ねていく感じですね。

編集部 : イメージですが、この業界は朝も夜もない感じがします。実際はどうですか?

それはクリエイティブに対する偏見だと思います。実際は、本当にクリエイティブな人は淡々と規則正しく仕事をして生きていたりする。規則正しい人の方が、総合的なアウトプット量は多いと思います。さらに人生という視点で言うと、「何歳までアウトプットし続けるのか」というのもありますね。村上春樹さんとかも「他の作家はみんな書かなくなっていて、自分の年でまだ書き続けている人がどこにいる」という話をエッセイなどでしています。三島由紀夫も村上春樹も、小説家というのは銀行員のような仕事だと言っています。それくらい規則正しくやるという。それは重要なことだと思います。だからうちは基本10時出社で、そこから遅れる場合は、絶対に上長への報告がないとダメです。22時以降の仕事も基本ダメ。また、やむを得ず休日に働いたら必ず振休をとってもらう形にしています。

それは佐渡島さんも?

僕は守ってないです(笑)。経営陣にとっての仕事は境目がないんです。例えば他の経営者とテニスするのも仕事だし、テニスしながら話さないと決まらない案件もある。ただ規則正しくはしています。休みの時間も仕事につながること、コルクという会社の発展につながることのために時間を過ごす。
以前、他の経営者の40歳くらいの大きな誕生日会に行ったときに、絶対に土日は休んで旅行をしているという人がいたんですよ。それで他の経営者の人が、その人から土日働いていることを怒られていて。土日働いているということは経営に本気ではない、と。経営って数十年かけてやっていくことなのに、休まないということは数十年続けられないやりかたをしている、それは甘えだと怒られていました。それはその通りだと思います。だから休みも戦略的に取る。休むのも仕事の一つですよね。常に体調が80%をキープするように戦略的に休みを取る。

間違いなく言えるのは、世の中のほとんどの人は椅子にこだわった方が絶対にいいですよ。自分のほとんどの時間を過ごすわけですから。

そうなんですよ。日本人は世界的に見ても長時間椅子に座っています。一日平均で7時間くらい座っている(※1)。感覚的にはもっと座っているんじゃないかと。

基本座っていますからね、人は。全部の椅子をingにしたいと思うほど気に入っていますけどね!

ありがとうございます!

仕事環境と椅子 仕事環境と椅子

佐渡島さんにお話を聞いた。仕事に対する考え方が非常によくわかった。そして、仕事にもたらすingの重要性も。概念で買うという発想は今まで聞いたことがなかったけれど、その概念は仕事にプラスをもたらしている。ぜひ皆さんもingに座ってその概念を体感していただきたい。

ing(イング)使用上のご注意※
本製品は事務用回転イスです。医療機器ではありません。治療目的での使用はご遠慮ください。
実験結果 ingを概念で買ってみてもいいかも!
※1:Bauman AE et al. The descriptive epidemiology of sitting: A 20-country comparison using the International Physical Activity Questionnaire (IPAQ). Am J Prev Med, 2011; 41: 228-235
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